東洋医学の羅針盤

東洋医学、鍼灸に基づいた健康維持について書きます

治療家は「治療の手札」を増やす

鍼灸師になったばかりの頃、私は毫鍼を中心に治療をしていた。

鍼灸師なのだから、鍼が上手くなればいい。

良い治療ができるように、毫鍼の技術を磨けばいい。

当時は、そんなふうに考えていた。

もちろん、毫鍼の技術を磨くことは大切である。

治療の基本だ。

一つの技術を深く学ぶことも、治療家には欠かせない。

しかし、臨床経験を重ねるにつれて、私はもう一つ大切なことに気づくようになった。

治療家には、できるだけ多くの「手札」が必要なのではないか。

一つの技術だけでは対応できない

臨床では、教科書通りの患者ばかりが来るわけではない。

同じ肩こりでも、身体の状態は人によって違う。

同じ腰痛でも、経過も体質も違う。

そして、毫鍼を使ってもなかなか変化しない患者もいる。

私自身、そうした経験を何度もしてきた。

その中でも忘れられないのが、毫鍼だけではなかなか改善しなかった膝の痛みの患者である。

その時、生時代に見た「井穴から血を出す治療」を思い出した。

技術はまだ未熟であったが、足の指に毫鍼を使って血を出してみた。

すると、それまで変化の乏しかった症状に、はっきりとした変化が現れた。

この経験が、私が本格的に刺絡を学ぶきっかけになった。

そして、刺絡を学ぶことで、私の治療の「手札」が一つ増えた。

手札が増えると、見えるものも変わる

治療技術が一つ増えるということは、単に「できることが一つ増える」というだけではない。

患者を見た時に、

「この方法だけではなく、こちらの方法も考えられる」

という選択肢が増える。

例えば、毫鍼だけで治療していた時には、

「この患者には、どうすれば毫鍼で変化を出せるだろうか」

と考えていた。

しかし刺絡を学んでからは、

「この患者には毫鍼だけでよいのか」

という別の視点を持てるようになった。

これは非常に大きな違いである。

だから「使い分け」が重要になる

もちろん、手札を増やせば、それだけで良い治療ができるわけではない。

技術が増えれば増えるほど、今度は使い分ける力が必要になる。

毫鍼を使うのか。

灸を使うのか。

刺絡を使うのか。

あるいは、それらを組み合わせるのか。

その判断は、患者の状態によって変わる。

だから私は、

「技術を増やすこと」と「技術を使い分けること」は、どちらも大切である

と考えている。

手札が多ければ、それだけ良い治療ができるという単純な話ではない。

しかし、そもそも手札が一枚しかなければ、選択することさえできない。

手札を増やすことは、患者のためである

治療家が新しい技術を学ぶ理由は、資格を増やすためでも、自分の技術を自慢するためでもない。

目の前の患者に対して、

「もう一つできることはないか」

と考えるためである。

私が刺絡を学んだのも、同じ理由であった。

毫鍼で対応できることは、もちろんたくさんある。

しかし、毫鍼だけでは十分な変化を得られない患者に出会った時、

「自分にはこの方法しかない」

となってしまえば、治療家としての選択肢は限られてしまう。

だからこそ、学び続けてきた。

刺絡だけでなく九鍼、素問霊枢の治療、経絡治療、中医学、トリガーポイントなどなど・・・。

学ぶことで、自分の治療の手札を増やしてきた。

 技術を増やし、そして使い分ける

私は、治療家にとって、

「一つの技術を深く掘り下げること」

と、

「複数の技術を身につけること」

は、どちらも必要だと考えている。

一つの技術を深く知らなければ、その本当の力は分からない。

しかし、一つの技術しか知らなければ、それだけで対応できる範囲には限界がある。

大切なのは、

技術の手札を増やすこと。

そして、

その中から、患者の状態に応じて適切な一枚を選ぶこと。

この二つがそろって、初めて治療家としての幅が生まれるのではないだろうか。

刺絡を学んだことで、私自身の治療の手札は確実に増えた。

そして今では、刺絡は私の臨床には欠かすことのできない技術の一つになっている。

治療家にとって、学びに終わりはない。

一枚、また一枚と手札を増やしていく。

その積み重ねが、目の前の患者にできることを増やしていくのである。

 

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刺絡とは「血を出す技術」ではない

「刺絡」と聞くと、多くの人は「血を出す治療」という印象を持つのではないだろうか。

実際、鍼灸師の中にも、「刺絡とは瀉血を行う技術である」と誤解している人は少なくない。

その考え方だけでは刺絡の本質を捉えることはできない。

 

確かに、刺絡では瘀血を排出する。

それはあくまでも治療の結果として行われる一つの手段であり、目的ではない。

もし血を出すことだけが目的であるならば、どこから、どれだけ出血させても同じということになってしまう。

しかし実際の臨床は、そのように単純ではない。

 

どこに刺絡を行うのか。

どの方法を選択するのか。

どの程度行うのか。

そして、そもそも刺絡を行うべき状態なのか。

これらを判断することこそが、刺絡という治療技術なのである。

 

私は開業当初、毫鍼だけで治療を行っていた。

臨床経験を重ねる中で、毫鍼だけでは十分な変化を得られない症例に出会った。

その経験が、刺絡の世界へ導いた。

 

刺絡を学び始めた頃は、私も「血を出す技術」を学ぶつもりでいた。

しかし、工藤流刺絡、江戸の刺絡、そして古典医学を学ぶにつれ、その考えは大きく変わった。

本当に学ぶべきことは、「どのように血を出すか」ではなかった。

「なぜ、ここに刺絡が必要なのか。」

その判断こそが、刺絡の本質であった。

 

刺絡学会の先生からも多く出せばいいもんではないとよく言われた。

患者の病態を丁寧に観察し、気血の状態を見極め、その上で必要と判断した時だけ刺絡を選択している。

つまり、刺絡は「血を出す技術」ではなく、「病態に応じて選択される治療技術」なのである。

 

刺絡を学ぶことで最も変わったのは、手技ではなく「患者を見る目」であった。

どのような病態なのか。

なぜ症状が改善しないのか。

毫鍼だけでよいのか。

刺絡を加えるべきなのか。

このように考える習慣が身についたことで、治療そのものの質が変わっていったのである。

 

刺絡を学ぶ人には、手技だけを覚えてほしいとは思わない。

もちろん、基本技術は極めて重要である。

しかし、それ以上に大切なのは、「なぜ、この治療を選択するのか」を考える力である。

技術は目的ではない。

患者をより良い方向へ導くための手段である。

 

そのためには、病態を正しく見極め、適切な治療法を選択する診る力が欠かせない。

刺絡とは、血を出す技術ではない。

患者を診る力を養い、その判断を治療として形にする技術なのである。

 

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刺絡を安全に臨床へ取り入れるためには、手技だけではなく、理論と安全管理、そして病態を判断する考え方を学ぶことが大切である。

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毫鍼と刺絡はライバルではない

毫鍼と刺絡はライバルではない

「先生は刺絡を専門にされているのですね。」

そう言われることがある。

確かに、長年にわたり刺絡を学び、臨床でも積極的に用いている。しかし、それは毫鍼を軽視しているという意味ではない。

 

むしろ私は、毫鍼こそ鍼灸治療の基本であると考えている。

毫鍼は身体全体の調和を図り、気血の巡りを整え、生体が本来持つ回復力を引き出す優れた治療法である。

私も現在の臨床において、毫鍼による治療を大切にしている。

 

では、なぜ刺絡を学び、臨床に取り入れるようになったのか。

それは、毫鍼だけでは変化を得にくい症例に出会ったからである。

臨床を続けていると、「もう一歩変化が欲しい」と感じる場面がある。

そのような時、私にとって刺絡は治療の幅を広げてくれる大切な技術となった。

 

私は、毫鍼と刺絡はどちらが優れているという関係ではないと考えている。

大工が一本の道具だけで家を建てないように、治療家も一つの技術だけですべての患者に対応できるとは限らない。

鉋には鉋の役割があり、鑿には鑿の役割がある。

同じように、毫鍼には毫鍼の役割があり、刺絡には刺絡の役割があるのである。

 

大切なのは、「何を使うか」ではない。

「使える技術を複数持つこと」である。

患者の身体を診て、病態を見極め、その時もっとも適した方法を選択していく。

その判断こそが、治療家の技術ではないだろうか。

 

古典を読むと、名医たちは決して一つの治療法に固執していない。

病態に応じて鍼を用い、灸を用い、刺絡を用い、ときには湯液を用いている。

彼らが重視していたのは治療法ではなく、「患者を治すこと」であった。

私は、この姿勢こそ現代の治療家にも必要だと考えている。

 

技術は目的ではない。

患者をより良い方向へ導くための手段である。

だからこそ、一つの技術に固執するのではなく、学び続ける姿勢を持ち続けたい。

私自身も、今なお古典を読み返し、新たな気づきを得ながら臨床を続けている。

治療家の成長に終わりはない。

 

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【江戸の鍼灸臨床録】背中の巨大な腫れ物から大工を救った鍼灸術

刺絡という治療をご存知だろうか。

鍼灸治療の一種で滞った血液を循環させる療法だ。

慢性病や、難治性疾患には欠かせない。

鍼灸師が覚えておかなければならない必須の治療だ。

江戸の鍼灸臨床記録にはこの刺絡治療がしばしばでてくる。

現代の私たちも思わず驚いてしまうような、鮮やかでドラマチックな治療の記録が数多く記されている。

今回はその中から、現代の健康のヒントにもつながる「ある大工の物語」を紹介する。

江戸の鍼灸臨床記録をもとに物語にしたものなのでもちろん実話である。

絶望のどん底にいた大工。背中にできた「20センチの腫れ物」

時は江戸時代。東朔のもとに、一人の男が血相を変えて相談にやってきた。

「先生、銚子に腕の良い大工がいるのですが……彼は今、絶望のどん底にいます。どうか助けてやってはもらえないでしょうか」

その大工は、背中に恐ろしい腫れ物ができていた。大きさはなんと、直径約20センチ。今で言う、重度の化膿性炎症(敗血症などを引き起こしかねない深刻な状態)である。

大工は涙を流しながら、このように訴えていたという。

「私には、まだ幼い3人の子供がいる。でも、この背中の腫れ物は、もう私の命を飲み込もうとしている。私が死んだら、あの子たちはどうなってしまうのか……」

体力は衰え、心も体もボロボロ。まさに死の影が背後に迫るなか、話を聞き終えた東朔は、動じることなく静かに、しかし力強く答えた。

「案ずるな。私には、それを治す確かな方法がある。すぐに、ここへ来るように伝えなさい」

命を救った伝統の技「刺絡」

東朔の言葉に一筋の光を見た大工は、最後の力を振り絞って東朔のもとへと駆けつけた。

じっくりと診察すると、巨大な腫れ物の中心はすでに膿んで崩れ始めている。そこで東朔が取り出したのは、一本の「鍼」であった。

東朔が施した治療、それこそが「刺絡」である。

・腫れ物の周りに、次々と鍼を打つ
・体の中に滞っていた「悪い血」を吸い出す

一箇所、また一箇所と丁寧に治療を重ねた。全部で8箇所から9箇所に施し、その日の治療を終えた。

翌日に起きた奇跡

驚くべき事態が起きたのは、翌日のことである。再び姿を現した大工を見て、周囲は目を見張った。昨日までの死にそうな表情が消え、顔に生気が戻っていたのだ。

大工は興奮気味に語った。

「先生!信じられません! 昨日はここへ来るまでの短い道のりで、何度も息が切れて5回も休まなければ歩けなかった。それが今日は……一度も休まずに、ここまで歩いて来られたんです!」

東朔は微笑み、昨日と同じ治療を続けた。それから10日あまり。大工の命を脅かしていた巨大な腫れ物は跡形もなく消え去り、彼は再び、愛する家族のために槌を振るうことができるようになったのである。

江戸の知恵は、現代の「長引く不調」にも生きている

当時は不治の病と恐れられた重い症状さえも、三輪東朔は「滞った血を巡らせる」という深い洞察力で治療していった。

この物語は、単なる昔話ではない。
現代の私たちも、ストレスや生活習慣、デスクワークなどによって、体の中の「巡り」が非常に滞りやすい環境にある。

・病院の検査では原因不明と言われる不調
・どこに行ってもなかなか治りにくい慢性的な症状

こうした現代の悩みに対しても、東朔が示した「刺絡」や「鍼治療」による、血液やエネルギーの循環を促すアプローチは、今なお非常に有効な手段となる。

もし、あなたやあなたの周りに長引く不調で悩んでいる方がいたら、かつて江戸の大工を救った「巡らせる治療」のことを思い出してみてほしい。時代を超えて私たちの健康を支える輝かしい宝物が、そこには眠っている。

 

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毫鍼だけでは改善できなかった患者との出会い ― 私が刺絡を学んだ理由

鍼灸師になりたての頃、私は毫鍼を中心に治療を行っていた。

学校や講習会で学んだ知識と技術を頼りに、日々患者と向き合い、一人でも多くの患者を良くしたいという思いで臨床に励んでいた。

その頃は、毫鍼のみを使い治療していた。

 

しかし、ある膝痛患者との出会いが、私の臨床を大きく変えることになる。

その患者は、どうしても改善しなかった。

経穴を変え、刺激量を変え、治療法を工夫しても、期待するような変化は得られない。

「なぜ治らないのか。」

その問いが頭から離れず、自分の未熟さを痛感する日々が続いた。

その時、学生時代に目にした一つの治療法が脳裏によみがえった。

井穴刺絡である。

 

当時は刺絡について体系的に学んだわけではなく、知識も技術も十分ではなかった。

それでも、「何とか患者を良くしたい」という思いだけは強かった。

私は毫鍼を用いて足趾から少量の瘀血を出した。

今振り返れば、お粗末な技術である。

しかし、その患者には予想以上の変化が現れたのである。

この経験は私にとって忘れることのできない出来事となった。

「刺絡には、まだ自分の知らない可能性がある。」

そう確信した瞬間であった。

 

その後、私は刺絡を本格的に学ぶことを決意した。

刺絡学会理事であった南利雄先生から、工藤流刺絡、江戸時代に行われていた刺絡術や古典医学に記された刺絡について学び、研鑽を重ねてきた。

学べば学ぶほど、江戸時代の名医たちがなぜ刺絡を重視していたのかが理解できるようになった。

そして臨床を積み重ねる中で、毫鍼だけでは変化を得にくい症例に対して、刺絡が有効な選択肢となる場面を数多く経験してきた。

もちろん、私は毫鍼を否定するつもりはない。

毫鍼は鍼灸治療の基本であり、多くの患者を改善へ導く優れた治療法である。

 

しかし、長年臨床を続けていると、「もう一つ治療の引き出しがあれば」と感じる症例に必ず出会う。

そのような時、私にとって刺絡は欠かすことのできない技術となった。

現在でも、毫鍼と刺絡、それぞれの長所を活かしながら日々の臨床にあたっている。

振り返れば、私を成長させてくれたのは、治せなかった患者との出会いであった。

もしあの膝痛患者に出会っていなければ、私は刺絡をここまで深く学ぶことはなかったであろう。

だからこそ、あの患者との出会いに感謝している。

 

治療家を成長させるのは成功体験だけではないと考えている。

むしろ、思うように治せなかった経験こそが、新たな学びへの扉を開いてくれる。

刺絡との出会いも、まさにその一つであった。

もし、毫鍼だけでは改善しない症例に悩み、治療の幅を広げたいと考えているのであれば、一度刺絡という技術に目を向けてみていただきたい。

刺絡は決して特殊な治療法ではない。

古くから多くの名医によって受け継がれ、臨床の中で磨かれてきた、実践的な治療技術なのである。

 


刺絡を体系的に学びたい方へ

もし、

  • 毫鍼だけでは改善しない症例に悩んでいる

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  • 治せる治療家を目指したい

  • 刺絡講習を受けたいが遠くて行けない、時間がない。

そう考えているのであれば、「刺絡オンライン基礎講座」をご覧いただきたい。

本講座では、刺絡の理論、安全管理、井穴刺絡・皮膚刺絡・細絡刺絡の基本技術を、初めて学ぶ方にも理解でき、これを見れば基本技術がしっかり身につくよう体系的に解説している。

 

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講師プロフィール

川内良典

はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師

鍼灸師になりたての頃、毫鍼だけでは改善できない膝痛患者との出会いをきっかけに刺絡を学び始める。

その後、刺絡学会理事であった南利雄先生に師事し、工藤流刺絡、江戸時代の刺絡術、古典医学に記された刺絡を学ぶ。

現在は、毫鍼と刺絡を組み合わせながら臨床を行うとともに、古典医書に記された刺絡の研究・普及にも取り組んでいる。

日本刺絡学会 評議委員 / 刺絡基礎実技講習 講師

東洋医療専門学校 元鍼灸実技講師

 

【治療を受けたい方】

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・受けるかどうかは迷っているが、刺絡治療について詳しく知りたい

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山田知生 (著)『スタンフォード式 疲れない体』 サンマーク出版 を読んで

スタンフォード式』というタイトルには少し抵抗があったが、読んでみると参考になる部分や納得できる点も多かった。

本書の主題は「IAP呼吸法」のようである。

呼吸の仕方は健康維持にとても重要な要素であり、その点が興味深かった。

 

IAP呼吸法の詳しい内容は本書を読んでいただきたいが、簡単に説明すると「腹圧を上げたまま行う呼吸法」である。

息を吸うと横隔膜が下がり、お腹が膨れる。この膨らんだお腹を凹ませずに、圧をかけたまま息を吐くのが特徴だ。

一般的な腹式呼吸では息を吐く際にお腹を凹ませるが、本書ではそれを否定的に捉えている。この点には共感する部分があり、非常に重要だと感じた。

 

以前にも書いたが、お腹をへこませると上腹部や胸部がロックされ、リラックスしづらくなり、健康にも悪影響を及ぼす。

逆に、お腹を凹ませずにリラックスして息を吐くと、丹田に充実感が生まれ、体が安定する。

本書では「お腹を凹ませずに、腹圧を上げたまま吐き、お腹を固める」と書かれているが、「お腹を固める」という表現は誤解を招く可能性があるのではないかと感じた。

人によっては、無理にお腹に力を入れてしまうかもしれない。

これは言葉で説明するのが難しい部分だが、私の考えでは、「丹田に息を吸い、腹圧が上がり、息を吐くときはリラックスして吐くことで、自然と丹田に充実感が生まれ、良い呼吸ができる」のが理想的だと思う。

 

本書では「疲れの4兆候」が示されたあとに、突然IAP呼吸法を行うことで疲れを軽減できると書かれており、全体を通して科学的なエビデンスに基づいていることが強調されている。

ただ、その論理展開には少し飛躍があるようにも感じた。

しかし、呼吸法が疲労の軽減に役立つこと自体は実感できる。

特に、「お腹を凹ませない」という考え方を知るだけでも、この本には十分な価値があると感じた。

 

最近の日本では筋トレがブームになっているが、本書では「筋肉だけを鍛える筋トレ」よりも「神経の伝達を重視するトレーニング」のほうが重要であると述べられており、この点には納得できた。

非常に参考になる内容だった。

また、怪我をした際には「最初の24時間はアイシングをし、それ以降は温めて血流を促したほうが治りが早い」という点も、実用的で役に立つ情報だった。

 

食事に関しても興味深い記述があった。

甘いものや炭酸飲料を摂ること、ドカ食い、朝食や昼食を抜いて1回の食事量が増えてしまうことが血糖値の急上昇につながり、健康に良くないという点には納得できる

。ただ、食事に関するエビデンスを示すのは難しいとも思う。

本書では精製された食品ではなく、玄米や雑穀を推奨しているが、消化が悪いため胃腸が弱い人には合わない場合もある。

また、「タンパク質を炭水化物の3倍摂るべき」と述べられているが、赤身肉の摂りすぎががんの原因になるというエビデンスもあるため、注意が必要だ。

さらに、本書では生野菜を勧めているが、本当にすべての人にとって良いのかどうかについては疑問も残る。

 

本というのは、すべての内容に納得する必要はない。

一つでも自分にとって役立つ情報があれば、それだけで価値があるものだ。

健康や呼吸法に関心がある方には、参考になる部分が多い一冊だと思う。

鍼灸治療を受けるなら刺絡治療が効果的

養生をしっかりすることがまず大切です。

その補いとして鍼灸治療を受けることは大きな助けとなります。

自分で毎日歯を磨いて、届かないところは歯医者さんのプロに任せるみたいなものです。

 

鍼灸治療と言っても多くの流派があり、様々なやり方があります。

では何を選んだらよいのか。結論を先にいうと全身丁寧に刺絡治療をしてもらうことが一番効果があります。

鍼治療というと細い鍼を体に刺して置いておく、毫鍼の置鍼療法を思い浮かべることが多いと思いますが、それ以上に大切な鍼があります。

それが刺絡治療です。

 

よく名人芸のように一本鍼なんていうのがありますが、健康管理には向きません。

首肩背中できれば手足まで全身きちんと治療をしてくれるところを選びましょう。

でも意外と毫鍼治療は下手なところが多いです。

置鍼は効果が悪いです。

お灸は自分でするものです。

 

鍼灸治療には大きく分けて3つの方法があります。

血の治療、気の治療、温める治療、それぞれ刺絡治療、毫鍼治療、お灸治療が該当します。

刺絡治療を受けるのが一番いいと言いましたが、本当は病態によってこの3つを使い分ける必要があります。

刺絡で効くものもあれば、毫鍼で効くものもあり、お灸で効くものもあります。

特に刺絡と毫鍼を当院ではよく使います。

 


では 3つとも 全てしてもらえればいいのではないかと思われるかもしれませんが、3つとも全ての治療をすると時間がかかってしまい料金が高くなってしまいます。

1回の治療で丁寧に3つとも全てやってもらうと刺激量が大きすぎて現実的ではありません。

ファーストチョイスをするのなら刺絡ということです。

健康管理をするなら当院なら丁寧に刺絡治療をしてくれる治療院を選びます。

刺絡は絵画でいうとデッサンみたいなものです。

これがないと本当は鍼灸治療は成り立たないのです。

でも意外と知られていません。

 


 歴史的に見て、 刺絡治療は全世界各地で行われていますが、 毫鍼治療は中国や日本、韓国などの特定の地域でしかされていませんでした。

中国伝統医のバイブルとなる素問、霊枢という文献では、体が非常に弱っている場合を除いては刺絡治療をまず行うという記述があちこちに見られます。

また臨床記述の7割ほどは刺絡治療です。

 


東洋医学の病理学的見地から見ても刺絡治療が最も必要であり、効果が高いことがわかります。

東洋医学では気血水の滞りから病気になると言われます。

この中で慢性病、難病につながるのが血の滞りです。気が最も動きやすく、次が水、血は固まるので最も動きにくいです。

刺絡治療は皮膚に1~3ミリくらい鍼を刺して、流れにくくなった血液を排除し、血の滞りを解消するのが刺絡治療です。

人体の気や血が流れる道を経絡といいます。この経絡を川に例えると、刺絡治療は川のヘドロを取るようなものです。

刺絡治療でヘドロを取ってから毫鍼で気の流れを整えます。まずは刺絡治療で体のヘドロを取ってしまわなくてはなりません。

刺絡治療は大型重機のように動かす力が大きいのですね。

普段から刺絡治療を行っておくと病気になりにくく、健康維持に役立ちます。

 


技術の面から言っても 刺絡治療が最も術者の差が出にくい治療です。

毫鍼治療は鍼の深さ、角度、刺激量、手技など多くの要素が関わってくるので、難しいです。

また一般的に置鍼という人体に鍼を刺しておいておく方法がよく取られますが、この方法が本当に効果の良い治療なのかどうか疑わしいです。

気を動かすには鍼を動かす手技が大切であると思っています。

 


でも刺絡治療をする人が昔に比べてかなり減ってしまいました。

また刺絡は技術の差が出にくいと言っても、やはり上手下手があります。

受けるのならば日本刺絡学会の基礎講習の終了者の治療院がいいでしょう。

日本刺絡学会の講習会の講師の先生ならより良いでしょう。

でも全身を丁寧にしてくれる先生というのは忘れないようにしてください。

指先の井穴刺絡は自分でもできるようにしておくと非常に役立ちます。

 

 


刺絡を体系的に学びたい方へ

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講師プロフィール

川内良典

はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師

鍼灸師になりたての頃、毫鍼だけでは改善できない膝痛患者との出会いをきっかけに刺絡を学び始める。

その後、刺絡学会理事であった南利雄先生に師事し、工藤流刺絡、江戸時代の刺絡術、古典医学に記された刺絡を学ぶ。

現在は、毫鍼と刺絡を組み合わせながら臨床を行うとともに、古典医書に記された刺絡の研究・普及にも取り組んでいる。

日本刺絡学会 評議委員 / 刺絡基礎実技講習 講師

東洋医療専門学校 元鍼灸実技講師

 

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