鍼灸師になったばかりの頃、私は毫鍼を中心に治療をしていた。
鍼灸師なのだから、鍼が上手くなればいい。
良い治療ができるように、毫鍼の技術を磨けばいい。
当時は、そんなふうに考えていた。
もちろん、毫鍼の技術を磨くことは大切である。
治療の基本だ。
一つの技術を深く学ぶことも、治療家には欠かせない。
しかし、臨床経験を重ねるにつれて、私はもう一つ大切なことに気づくようになった。
治療家には、できるだけ多くの「手札」が必要なのではないか。
一つの技術だけでは対応できない
臨床では、教科書通りの患者ばかりが来るわけではない。
同じ肩こりでも、身体の状態は人によって違う。
同じ腰痛でも、経過も体質も違う。
そして、毫鍼を使ってもなかなか変化しない患者もいる。
私自身、そうした経験を何度もしてきた。
その中でも忘れられないのが、毫鍼だけではなかなか改善しなかった膝の痛みの患者である。
その時、生時代に見た「井穴から血を出す治療」を思い出した。
技術はまだ未熟であったが、足の指に毫鍼を使って血を出してみた。
すると、それまで変化の乏しかった症状に、はっきりとした変化が現れた。
この経験が、私が本格的に刺絡を学ぶきっかけになった。
そして、刺絡を学ぶことで、私の治療の「手札」が一つ増えた。
手札が増えると、見えるものも変わる
治療技術が一つ増えるということは、単に「できることが一つ増える」というだけではない。
患者を見た時に、
「この方法だけではなく、こちらの方法も考えられる」
という選択肢が増える。
例えば、毫鍼だけで治療していた時には、
「この患者には、どうすれば毫鍼で変化を出せるだろうか」
と考えていた。
しかし刺絡を学んでからは、
「この患者には毫鍼だけでよいのか」
という別の視点を持てるようになった。
これは非常に大きな違いである。
だから「使い分け」が重要になる
もちろん、手札を増やせば、それだけで良い治療ができるわけではない。
技術が増えれば増えるほど、今度は使い分ける力が必要になる。
毫鍼を使うのか。
灸を使うのか。
刺絡を使うのか。
あるいは、それらを組み合わせるのか。
その判断は、患者の状態によって変わる。
だから私は、
「技術を増やすこと」と「技術を使い分けること」は、どちらも大切である
と考えている。
手札が多ければ、それだけ良い治療ができるという単純な話ではない。
しかし、そもそも手札が一枚しかなければ、選択することさえできない。
手札を増やすことは、患者のためである
治療家が新しい技術を学ぶ理由は、資格を増やすためでも、自分の技術を自慢するためでもない。
目の前の患者に対して、
「もう一つできることはないか」
と考えるためである。
私が刺絡を学んだのも、同じ理由であった。
毫鍼で対応できることは、もちろんたくさんある。
しかし、毫鍼だけでは十分な変化を得られない患者に出会った時、
「自分にはこの方法しかない」
となってしまえば、治療家としての選択肢は限られてしまう。
だからこそ、学び続けてきた。
刺絡だけでなく九鍼、素問霊枢の治療、経絡治療、中医学、トリガーポイントなどなど・・・。
学ぶことで、自分の治療の手札を増やしてきた。
技術を増やし、そして使い分ける
私は、治療家にとって、
「一つの技術を深く掘り下げること」
と、
「複数の技術を身につけること」
は、どちらも必要だと考えている。
一つの技術を深く知らなければ、その本当の力は分からない。
しかし、一つの技術しか知らなければ、それだけで対応できる範囲には限界がある。
大切なのは、
技術の手札を増やすこと。
そして、
その中から、患者の状態に応じて適切な一枚を選ぶこと。
この二つがそろって、初めて治療家としての幅が生まれるのではないだろうか。
刺絡を学んだことで、私自身の治療の手札は確実に増えた。
そして今では、刺絡は私の臨床には欠かすことのできない技術の一つになっている。
治療家にとって、学びに終わりはない。
一枚、また一枚と手札を増やしていく。
その積み重ねが、目の前の患者にできることを増やしていくのである。
刺絡を体系的に学びたい方へ
刺絡は、毫鍼とは異なる治療の選択肢の一つである。
刺絡の理論、安全管理、井穴刺絡・皮膚刺絡・細絡刺絡の基本技術を体系的に学びたい方に向けて、「刺絡オンライン基礎講座」を用意している。
「治療の手札を増やしたい方」
「治せる治療家を目指したい方」
「刺絡を基礎から学びたい方」
刺絡を基礎から学びたい方におすすめの講座である。
▶ 刺絡オンライン基礎講座はこちら
https://www.app.lekcha.com/lp/823c9137-3908-43ed-b05b-607841f6555b
・ 刺絡治療を受けたい一般の方へ
「自分の不調にも合うだろうか」「一度施術を受けてみたい」という方は、こちらから詳細をご覧いただけます。
▶ 刺絡治療はこちら
https://ryohten7.wixsite.com/sinkyu