りょうてん公式ブログ

東洋医学、鍼灸に基づいた健康維持について書きます

藤田霊斎氏の呼吸法『藤田式息心調和法初伝』より(1)

藤田霊斎氏は調和道丹田呼吸法の創始者です。

幼少期から極度の虚弱者であったためとも、酒を飲みすぎて健康を損ねたためとも言われますが、どちらが正しいのか分かりませんが、健康を取り戻すため、山中にこもって呼吸法を編み出しました。

 

『藤田式息心調和法初伝』から呼吸法の仕方のところを抜粋しました。

全編を読みたい方は国立国会図書館デジタルコレクションで無料で見ることができます。

https://dl.ndl.go.jp/pid/924012

 

息心調和法初伝 実習方法

一には生理的の側に属する呼吸作用、二は精神的の側に属する観念作用、この二つの方法を調和し組織してある一種の新しい働きを起こさしむるのがこの息心調和の修養法である。

 

実習法

第一節 調息法

(一)姿勢

この修養法を実習する時にはまず姿勢について左の心得を忘れてはならぬ。

▲実修の時には、座りでも、腰掛けでも、あぐらでも、仰臥でも、直立でも、人々の勝手にてよろしいが、左の数項だけは必ず守らねばならぬ。

(一)背骨をまっすぐにし、下腹を前へ張り出し、へその上部からみぞおへちへかけては必ず力の入らぬように、そうしてへその上部を少しく折り、そこを凹ますようにしておくこと最も 肝要なり。

(二)頭はまっすぐに、鼻とへそとが直線になるように、肩は垂れていかることなく、手は引き寄せて身に近づけ、両の掌は膝の上へ載せて組み合わせ、眼は軽く閉じて、腹の中を観る心地になるべし。

 

(二)呼吸調息の方法

(イ)呼気

呼気は息を吐き出すことである。[普通は吸気から始むるが順序であるけれども、初心の人は呼気からするとやり易いから、今はここに呼気から始むることにしたのである。]

そこでまず息を吐き出そうとする前においては、始めにチョット息を吸入して下腹部を張り出し、それから すぐウンと下腹部に気力を充たし、 堪ゆることしばらくして後そろそろと呼気に移るべし。

 

 ▲注意

 但しこの『ウンと下腹部に 気力を充たす』という時に当たって、最も注意すべきは下腹にウント気力を充たすと同時に、鼻からフッと極て軽く少しく息を洩らすことである、この注意を忘れると胃部から胸部へかけて力が充ち、胸苦しくまた頭部の方にまで刺激を與ふるゆえ必ずこのことのなきように注意せねばならぬ、それからこのこらえておる時間のことだが、この時間はどれほどでなければならぬということはなく、ちょうど 自分に適度にした時間だけにやめておき、決して無理をしてこらえすぎてはならぬ、仮に 20秒時堪えられる人ならば17・8秒くらいのところにしておくことが肝要である、ここに大いに注意すべきは、 もし内臓機関のどこになりと故障のあるであったならば、このこらえる時間はごくわずかでよろしく、場合によりては、少しも堪えることのないようにせねばならぬから、その辺はよろしく 実習者の手心によるべく、要するに少しでも無理のなきようにすることが最も 肝要である。

さてかくして後いよいよ息をはき出すこととなる、その方法は左の如し、

 

▲呼気の方法

 まず 鼻からそろそろと線香の煙の出るように息を吐き出すのであるが、その吐き出す時に当たって、最初はまず下腹を張り出す心地になりてそのまま持続し、そうして鼻から静かに息を吐き出すべし。

かくそろそろ 息を吐き出しておると、最初は張り出す心地にしていた下腹もおいおい凹んでくる、 すなわち下腹を緊縮するようの心地になりて息を吐き出すと、ついには下腹部は背後に付着するほどにまで凹むのである、かくいう具合になりて始めて、 完全なる呼気ができたのである。

 

(ロ)吸気の方法

かく残らず息を吐き出してしもたならば、今度は吸気にうつるのである。その方法は 左の如し、

 

▲まず鼻から スーと空気を吸い入れ、それが肺に充つるようになるに従って、横隔膜は下へ下がり、 下腹部は前へふくれ出る、こうなって始めて肺の中へ空気がいっぱいに充ちたことになるのでこれがすなわち完全なる吸気である。

このごとく息を吸い入れ下腹分が膨れたならば、それからまた先に説いたごとくウンと一段下腹部に気力を充たすようにする、しかしその時は必ず鼻から息をもらすことを忘れてはならぬ。

かくして息を吸い入れ、しばらく堪えてそれからまた吐き出すこととなるのであるが、 前の呼気とこの吸気を合してこれを一呼吸という

 

◉吸気について注意

◉ 吸気の時間は 呼気の約1/3くらいの時間にてよろしい。

◉息を吸い入れる時には、始めに肋骨を静かに少し上へあげ、そうしてまた横にも少しく広げるようの心地になりてやるべし。

ただし、 肋膜病や肺病の人などは必ず胸部を動かしてはならぬ、胸部を動かさずに、下腹部すなわち丹田からのみ静かに呼吸をしておるようにすべし。

 

▲右の呼吸を繰り返して、30分なり1時間なり、継続すべし、その継続期間はその人の気根と境遇と業務の繁閑とにより、一様でなくてもよろしい、つまり 20分でも30分でも、ないしは 1時間でも2時間でもよろしいのである。

 

(ハ)静呼吸

右の呼吸を継続して、ある 適度の時間を経過したならば、今度は静呼吸に移るべし、その方法は左の如し。

下腹部に力を入れ、臍部以上にもまた以下に少しの力の入っておらぬよう、 気の滞りのなきようにして、それから 細く長く自然のままの呼吸をしておる、これがすなわち静呼吸である、この時には下腹を出したり凹めたりすることなく、ただ 張ったままにして静かにかすかなる自然の呼吸をしておる、そうしてこの呼吸の時間もまた10分なり20分なり30分 なりその人の任意にてよろしい。

 

 (附)右の調息法実修ついて注意

▲下腹部へ力を充たし、 少時間息を止めておる時に際して、咽喉にて気息の通い路を閉塞し、そうして顔を赤くしたり、渋面をつくったりすることのなきように注意すべし。

▲ 現に病気のある人は注意して無理をせぬように、始めはごく軽くして徐々に進むようにすべし。 呼吸調息法は右にて大略終わりたるゆえ、次には最も大切なる精神作用のことを述ぶべし。